株式会社スリーエーコンサルティング

2025年7月9日

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」とは?企業の取り組み事例も紹介

1.SDGsとは?



SDGsとは、国連に加盟する全193か国が達成を目指す国際目標のことです。

Sustainable Development Goalsの略称で、日本語にすると「持続可能な開発目標」です。経済、社会、環境の3つの側面にまたがり、持続可能な社会の実現を目指しています。

「誰ひとり取り残さない」を基本理念に、17の目標と169のターゲットから構成されています。

2.SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を簡単に解説

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」は、すべての人々に働きがいのある仕事を提供し、持続可能な経済成長を促進することを目指しています。

これは、単に経済を大きくするだけでなく、その成長がすべての人に行き渡り、誰もが尊厳を持って働ける社会を実現しようという、非常に包括的な目標です。

世界には、働きたいのに仕事がない失業者が多数存在します。また、仕事があっても、十分な収入が得られず貧困から抜け出せない人々も少なくありません。さらに、児童労働や強制労働といった人権侵害にあたるような働き方もいまだに存在しています。

このような状況を改善し、経済発展と人々の幸福を両立させるために、目標8は極めて重要な意味を持ちます。

この目標は、以下のような具体的な内容を含んでいます。

(1)働きがいのある雇用の創出

 すべての人々に公正で働きがいのある仕事を提供し、失業率を低下させることを目指します。

 特に若者や障がい者、女性の雇用機会を増やすことが重要です。

(2)労働環境の改善

 労働者の権利を保護し、安全で健康的な労働環境を確保することを推進します。

 これには、労働時間の適正化や職場での差別の撤廃が含まれます。

(3)生産性の向上

 持続可能な資源利用や技術革新、スキルアップと教育の促進を通じて、生産性を向上させることを目指します。

(4)不平等の是正

経済成長の恩恵がすべての人々に公平に行き渡るようにし、所得格差を縮小することを目指します。

これらの取り組みを通じて持続可能な経済成長を促進し、全ての人に働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)を提供することを目指しています。

そして、この「働きがいも経済成長も」という目標には、10のターゲットとAからBまでの具体的な対策が2つ設定されています。

8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。

8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。

8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

8.4 2030 年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する 10 年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。

8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。

8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。

8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025 年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。

8.9 2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

8.10 国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。

8.A 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。

8.B 2020 年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

引用元:国連公式サイト

3.SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」における日本の課題とは?

日本における課題としては、長時間労働、非正規雇用増加、ジェンダー格差が主に挙げられます。

これらの課題は、日本の労働市場における様々な問題点を反映しています。

(1)長時間労働の是正とワークライフバランスの確立

日本は、依然として長時間労働が常態化している企業が多いことが大きな課題です。「過労死」という言葉が国際的にも認識されているほど、長時間労働は労働者の健康を害し、生産性の低下にもつながっています。

「働き方改革」により残業時間の上限規制などが導入されたものの、サービス残業や持ち帰り残業など、実態として労働時間が減っていないケースも少なくありません。労働者が心身ともに健康で、仕事と私生活のバランスを取りながら働ける環境を整えることが求められています。これは、単に時間を短縮するだけでなく、業務の効率化や生産性向上、そして「長時間働くことが美徳」とする企業文化の変革も必要とします。

(2)非正規雇用の増加と雇用の質の格差

日本では、非正規雇用労働者の割合が増加傾向にあります。特に女性においてその傾向が顕著で、このことが雇用の安定性や待遇における課題を生み出しています。

非正規雇用労働者は、正規雇用労働者と比較して賃金水準が低い傾向にあり、社会保険の適用や福利厚生、キャリア形成の機会においても格差が存在することが多いです。また、「同一労働同一賃金」の原則が推進されているものの、実態として、同じ業務内容でも雇用形態によって不合理な差があるケースが見られます。この雇用の質の格差は、労働者の生活の安定を脅かし、将来への不安を増大させる要因となっています。

(3)ジェンダー間の賃金格差と管理職における女性比率の低さ

日本におけるSDGs目標8の達成において、男女間の賃金格差は深刻な課題の一つです。OECD(経済協力開発機構)のデータを見ても、日本の男女間賃金格差は他の先進国と比較して大きい水準にあります。

賃金格差の原因の一つとして、女性が管理職などの責任あるポジションに就く割合が低いことが挙げられます。出産や育児といったライフイベントがキャリア形成に与える影響が大きく、男性に比べて昇進の機会が限られる傾向があります。これにより、キャリアを通じて賃金に大きな差が生じ、女性の経済的自立や働きがいを阻害する要因となっています。性別にかかわらず、能力と実績に応じた評価と機会を提供し、多様な人材が活躍できる職場環境を整備することが喫緊の課題です。

これらの課題は相互に関連しており、一つを解決するだけでは十分ではありません。企業、政府、そして個々人が協力し、包括的なアプローチでこれらの課題に取り組むことが、日本がSDGs目標8を達成し、真に「働きがいも経済成長も」両立できる社会を築くために不可欠です。

4.どのような企業が対象となるのか?

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」は、すべての企業に関連しています。この目標には、大企業から中小企業、さらにはスタートアップ企業に至るまで、業種や規模を問わず、全ての企業が取り組むべき課題が含まれています。企業が持続可能な経済成長を促進し、全ての労働者に対して安全で安定した労働環境を提供し、適切な報酬と働きがいのある雇用を実現することが求められています。

5.企業の具体的な取り組み事例7選

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に関連して、企業の具体的な取り組み事例を7つ挙げます。

(1)持続可能なビジネスモデルの採用

再生可能エネルギーの利用や製品のライフサイクル管理など、環境に配慮した持続可能なビジネスモデルを採用し、長期的な経済成長を目指すとともに、社会的責任を果たします。

(2)公正な賃金と福利厚生の提供

従業員に対して公正な賃金を支払い、充実した福利厚生を提供することにより、経済的な安定と働き甲斐を確保します。

(3)多様性とインクルージョンの推進

性別、年齢、国籍、障がいの有無に関わらず多様な人材を積極的に採用し、全ての従業員が自分らしく働ける職場環境を提供します。インクルーシブな職場文化を築くことにより、従業員が働きがいを感じ、生産性の向上や企業の競争力を高めることにつながります。

(4)フレックスタイム制の導入やリモートワークの推進

従業員が自身のライフスタイルに合わせて勤務時間を柔軟に設定できるようにすることで、ワークライフバランスの向上を図ります。

また、在宅勤務やテレワークを導入し、通勤時間の削減や多様な働き方を支援することで、労働環境を改善します。

(5)インターンシッププログラムの充実、職業訓練と就職支援

ニート状態にある若者に対して、実務経験を積む機会を提供し、社会復帰のサポートを行います。専門的な職業訓練を提供し、就職活動のサポートを行うことで、ニートの若者が就労につながるスキルを身につける手助けをします。

(6)キャリア開発プログラムの提供

従業員が自己成長を図れるような研修や教育プログラムを提供し、キャリアアップの支援をします。

(7)職場環境の改善

従業員の健康と安全を確保するために、快適な作業スペースの提供やメンタルヘルスサポートを充実させるなどの職場環境を改善し、ストレスを軽減する取り組みを行います。

これらの取り組みは、企業がSDGsの目標8に貢献するための方法であり、経済成長とともに、全ての人々が人間らしい働きがいのある雇用を得ることを目指しています。

6.私たちにもできる身近な取り組み

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に関連して、私たちにもできる身近な取り組み事例を紹介します。

(1)「倫理的な消費」を心がける

私たちが商品やサービスを購入する際に、その背景にある「働き方」に意識を向けることができます。

  • フェアトレード製品を選ぶ: コーヒー、チョコレート、バナナ、衣料品など、フェアトレード認証マークのついた商品を選ぶことで、生産者(特に開発途上国の農家や労働者)に適正な賃金が支払われ、児童労働や強制労働がない環境で生産されていることを支援できます。
  • 企業のサプライチェーンに関心を持つ: 購入したい商品のブランドが、労働者の人権や労働環境に配慮しているか、ウェブサイトやニュースなどで調べてみるのも良いでしょう。例えば、製造委託先の工場で不当な労働が行われていないか、といった情報に関心を持つだけでも、企業に改善を促すプレッシャーになります。
  • 地元の生産者や中小企業を応援する: 地域経済の活性化は、ディーセント・ワークの創出にもつながります。地元の商店や農家から商品を購入したり、地域に根ざしたサービスを利用したりすることも身近な貢献です。

(2)「働き方」を意識した行動

職場や自身の働き方を見直すことで、働きがいのある社会づくりに貢献できます。

  • ワークライフバランスを重視する: 自分の残業時間を適切に管理し、不要な残業を避けることで、長時間労働是正の動きを後押しできます。また、周囲にもワークライフバランスを尊重する雰囲気を作ることに貢献できます。
  • ハラスメントの防止と通報: 職場におけるあらゆる種類のハラスメント(パワハラ、セクハラなど)を許容しない意識を持つことが重要です。自身が被害に遭ったり、目撃したりした場合は、適切な窓口に通報し、解決に努めることが、より働きやすい環境を作る第一歩となります。
  • 多様性を尊重する: 性別、年齢、国籍、障害の有無などに関わらず、すべての人が尊重され、能力を発揮できる職場環境づくりに協力する意識を持つことが大切です。例えば、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)をなくす努力をするなどです。
  • スキルアップや学び直し(リスキリング)に取り組む: 自身のスキルを高めることは、自己の生産性向上につながり、企業の成長にも貢献します。また、変化の激しい時代において、自身の働きがいを維持するためにも重要です。

(3)「情報を知り、広める」活動

SDGs目標8に関する知識を深め、周囲に広めることも、大きな影響力を持つ活動です。

  • SDGsや目標8について学ぶ: 厚生労働省や国連機関、NGOなどが発信している情報源を活用し、世界の労働状況や経済成長に関する課題、日本の現状について知識を深めましょう。
  • SNSや会話で発信する: 学んだことを友人、家族、同僚と共有したり、SNSで発信したりすることで、より多くの人が問題意識を持つきっかけを作ることができます。
  • 関連するキャンペーンやイベントに参加する: 世界児童労働反対デー(6月12日)など、関連する国際デーのイベントに参加したり、オンラインでのキャンペーンに署名したりすることも、意識を高める一歩となります。

これらの身近な取り組みは、どれも小さな一歩かもしれませんが、一人ひとりの意識と行動が積み重なることで、大きな変化を生み出す力になります。ぜひ今日からできることを見つけて、実践してみてください。

7.企業が目標8「働きがいも経済成長も」に取り組む上での課題

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に取り組む上で課題は以下の通りです。

(1)「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の推進と多様な働き方への対応

安全・公正な報酬・尊厳ある働き方を全ての人に提供するのは容易ではありません。特に、非正規雇用増加の中、公平な待遇やキャリア支援、柔軟な働き方の実現に企業は課題を抱えています。

(2)長時間労働の是正と生産性の両立

日本の長時間労働文化を是正しつつ、いかに生産性を維持・向上させるかが課題です。業務効率化やIT活用、従業員の意識改革といった複合的な対応が求められます。

(3)ハラスメント根絶と多様性の推進

あらゆるハラスメントの深い理解と実効性ある対策は不可欠です。さらに、性別・国籍・障がいなど多様な人材が能力を最大限発揮できる環境を構築し、企業文化として定着させることが大きな課題となっています。

これらの課題は、企業の持続的な成長と、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境を築く上で、避けて通れない重要なテーマと言えるでしょう。

まとめ

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に取り組む企業は、労働環境の改善、雇用機会の拡大、そして働きがいの向上を目指しています。例えば、フレックスタイム制の導入やリモートワークの推進により、従業員のワークライフバランスの改善や、社内教育やスキルアップの機会を提供することによる、従業員のキャリア成長の支援などです。これらの取り組みにより、持続可能な経済成長と社会全体の福祉向上を目指しましょう。

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