2024年9月19日
健康経営優良法人を認定するメリットとデメリットは?
健康経営優良法人の認定を受けることには多くのメリットがあります。まず、従業員の健康促進や生産性の向上が期待できます。さらに、公共工事の入札案件での加点や採用活動での活用、金銭面での優遇措置が受けられるケースもあります。
一方で、認定を取得するためには手間や時間といったコストがかかるというデメリットも存在します。
目次
1.健康経営優良法人に認定されるメリット
近年、従業員の健康を経営戦略に位置づけ、健康経営を推進する企業が増加しています。
2017年の制度開始以来、健康経営優良法人の認定数は右肩上がりで、2024年3月には約2万社に達しました。健康経営優良法人の認定は、企業のブランド力向上や従業員満足度向上など、多角的なメリットをもたらします。
(1)職場環境を整えることができる
健康経営優良法人として認定されるためには、従業員の健康や働きやすさを重視し、職場環境の改善に取り組むことが求められます。
そのため、企業は従業員の健康や働きやすさを考慮した施策を積極的に導入することになります。認定をきっかけに現状把握することができるので良いきっかけにもなります。
また、職場環境を整えることによるメリットは多岐にわたります。まず、従業員の健康状態が向上し、生産性が向上することが期待されます。健康な従業員は、業務に対するモチベーションが高まり、業務効率が向上する可能性があります。
また、職場環境が整備されることで、ストレスや過重労働の軽減につながり、従業員のメンタルヘルスの向上にもつながるでしょう。
(2)採用活動でアピールできる
現代の求職者は、給与や福利厚生だけでなく、働きやすい職場環境や企業の価値観にも大きな関心を寄せています。
健康経営優良法人の認定は企業が従業員の職場環境の整備に真剣に取り組んでいる証拠であり、これが採用活動において強力なアピールポイントとなります。
健康経営優良法人の認定を受けることで、企業は「従業員の健康を大切にする企業」というイメージを強く打ち出すことができますし、企業のブランド価値を高める効果もあります。
認定を受けた企業は、公式な認定マークを使用することができ、これを採用広告や企業ウェブサイトに掲載することで、求職者に対して強い印象を与えることができます。
(3)入札での加点対象になっている
健康経営優良法人を認定することで、企業は入札活動において加点対象となる地域もあります。
この認定を受けることで、企業は入札での競争力を高めることができ、地域社会との連携を強化することができます。
健康経営優良法人の認定は、企業が従業員の健康管理に積極的に取り組んでいることを示す証です。これにより、企業の社会的責任(CSR)や持続可能な経営(ESG)に対する姿勢が評価されます。特に公共事業や自治体が主催する入札においては、企業の社会的責任や持続可能性が重視される傾向が強まっています。そのため、健康経営優良法人の認定を受けている企業は、他の企業と比較して入札の際に有利な立場に立つことができます。
(4)補助金の加点対象になっている
現在、5種類の補助金で加点対象になっており、これによって企業は補助金の採択率が上がります。
健康経営優良法人の認定は補助金の取得にもプラスの影響を与え、企業の持続的な成長と従業員の幸福感向上に貢献します。
補助金の加点をきっかけに健康経営優良法人に向けて動き出す企業も少なくありません。
(5)保険料の割引対象になる
健康経営優良法人に認定されることで、企業は従業員の健康管理に積極的に取り組んでいることが評価され、保険会社によっては保険料の割引を受けることが可能になります。これは、企業にとって大きな経済的メリットをもたらすだけでなく、従業員にとっても福利厚生の一環として非常に魅力的です。
これにより、企業は保険料のコストを削減でき、その分を他の福利厚生や従業員の健康促進活動に充てることが可能になります。
また、従業員にとっても企業が健康管理に積極的に取り組んでいることが明確になるため、安心して働くことができる環境が整います。
さらに、保険料の割引は企業の財務状況にもプラスの影響を与えます。保険料の削減により、企業の経費が軽減され、利益率の向上や資金の有効活用が可能になります。
このように、健康経営優良法人の認定を受けることで、保険料の割引という直接的な経済的メリットを享受できるだけでなく、従業員の健康管理や企業の財務状況の改善にも寄与することができます。
(6)金利の優遇の対象になる
健康経営優良法人に認定されることで、金融機関からの融資において金利の優遇を受けることが可能になります。これは、企業が健康経営に取り組むことでリスク管理がしっかりと行われていると評価されるためです。
具体的には、健康経営優良法人に認定されることで、金融機関からの信頼度が向上し、金融機関によっては通常よりも低い金利での融資が受けられることがあります。
これにより、企業は資金調達コストを削減することができ、経営の安定化や新たな投資の促進に繋がります。特に中小企業にとっては、金利の優遇は大きな経済的メリットとなり、事業拡大や設備投資、人材育成などの重要な経営戦略を実行する際の強力なサポートとなります。
2.健康経営優良法人の認定を目指すことにデメリットはあるか
健康経営優良法人の認定を受けることは、企業にとって多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
(1)コストがかかる
健康経営優良法人の認定を目指すことには多くのメリットがありますが、その一方でデメリットも存在します。
その一つが「コストがかかる」という点です。
健康経営優良法人の認定を受けるためには、従業員の健康管理や職場環境の改善に対する具体的な取り組みが求められます。これには、健康診断の実施やメンタルヘルスケアの導入、運動プログラムの提供など、多岐にわたる施策が含まれます。
これらの施策を実行するためには、当然ながら一定の費用が発生します。
まずは認定申請料です。
大規模法人部門は88,000円(税込)、中小規模法人部門は16,500円(税込)と設定されています。
こちらの認定申請料は毎年申請の際に発生するため注意が必要です。
また、健康診断の費用や専門家のコンサルティング費用、さらには従業員向けの健康プログラムの運営費用なども挙げられます。
しかし、これらのコストは長期的に見れば、従業員の健康増進や生産性向上、企業イメージの向上など、多くのメリットをもたらす投資と考えることができます。したがって、コストがかかるというデメリットを理解した上で、健康経営優良法人の認定を目指すことが重要です。
(2)手間や時間がかかる
健康経営優良法人の認定を目指す際のデメリットとして、手間や時間がかかる点が挙げられます。
認定を受けるための申請手続きや書類作成にも時間と労力がかかります。これらの手続きは、企業の通常業務に加えて行う必要があるため、担当者にとっては大きな負担となることがあります。
そのため、組織全体での取り組みを進めるためには、多くの手間や時間がかかることが考えられます。
(3)施策によっては不満につながる可能性もある
健康経営の取り組みは、従業員の健康を促進し、企業全体の生産性を向上させることを目的としていますが、その施策が全ての従業員にとって歓迎されるとは限りません。
例えば、健康診断の受診を義務化したり、禁煙を推奨するために社内での喫煙を禁止したりする施策は、健康意識の高い従業員には支持されるかもしれませんが、そうでない従業員にはストレスや不満を引き起こす可能性があります。また、運動プログラムや健康セミナーの参加を推奨することも、忙しい業務の合間に時間を割くことが難しい従業員にとっては負担となることがあります。
そのため従業員の意見を取り入れながら、バランスの取れた施策を実施することで、不満を最小限に抑え、全体としての健康経営の効果を最大化することが求められます。
3.健康経営優良法人の認定を実現すべき企業の特徴
(1)採用に課題がある
現代の企業において、優秀な人材の確保はますます重要な課題となっています。特に少子高齢化が進む日本では、労働力の確保が一層困難になってきています。
このような状況下で、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、健康経営優良法人の認定を受けることが大きなアドバンテージとなります。
健康経営優良法人の認定を受けることで、企業は従業員の健康管理に積極的に取り組んでいることをアピールできます。つまり、求職者に対して「この企業は従業員を大切にしている」というポジティブなイメージを与えることができます。
特に、若い世代の求職者は、給与や福利厚生だけでなく、働きやすさや職場環境にも重きを置く傾向があります。健康経営優良法人の認定は、こうした求職者に対して強力なアピールポイントとなります。
総じて、採用が課題となっている企業にとって、健康経営優良法人の認定は非常に有効な手段であると言えます。従業員の健康を重視し、働きやすい環境を提供することで、企業は優秀な人材を確保し、持続的な成長を実現することができるのです。
(2)人事労務周りを整備していきたい
従業員の健康を支援し、働きやすい環境を整えるためには、適切な人事制度や労務管理が欠かせません。
具体的には、柔軟な働き方の導入や労働時間の適正管理、健康診断の実施、ストレスチェックの実施など、従業員の健康と働きやすさを促進するための施策を整備していくことが重要です。
また、従業員の声に耳を傾け、適切なフィードバックやキャリアパスの提供など、人事制度を通じて従業員の成長と働きがいを支援することも大切です。
これらの取り組みは、企業の健康経営を推進し、従業員の満足度や生産性の向上につながるでしょう。
(3)働く環境を整えていきたい
現代のビジネス環境において、企業が持続的な成長を遂げるためには、従業員の健康と働きやすさを重視することが不可欠です。
特に「健康経営優良法人」の認定を目指す企業にとって、働く環境の整備は重要な課題となります。
働く環境を整えていきたい企業は、物理的環境の改善、メンタルヘルスのサポート、柔軟な働き方の推進、コミュニケーションの活性化といった多角的なアプローチを通じて、従業員が健康で働きやすい職場を実現しています。これらの取り組みを通じて、企業は「健康経営優良法人」の認定を目指し、持続的な成長を遂げることができるのです。
4.まとめ
健康経営優良法人の認定は、企業にとって多くのメリットをもたらします。
採用活動でのアピール、入札での加点対象など、長期的な視点で見れば大きな投資効果が期待できます。
また、優秀な人材の確保や離職率の低下といった人事面での効果も見逃せません。
一方で、初期投資や運用コスト、継続的な取り組みが求められるため、短期的には負担となる可能性もあります。
しかし、これらのデメリットを上回るメリットがあることを考慮すれば、健康経営優良法人の認定を目指すことは、企業の持続的な成長と社会的責任を果たすための重要なステップと言えるでしょう。